
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
萩尾望都
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
コメント
漫画「トーマの心臓」を読んだのは、1981年です。
あんまり印象には残りませんでした。
「ポーの一族」「スターレッド」「百億の昼と千億の夜」等の方がずっと好きでした。
最近、森博嗣著「トーマの心臓」を読んだので、もう一度漫画の方を読んでみました。
森さんの本よりは分かりやすいように思いますが、テーマは、無償の愛ということのようなので、苦手のテーマです。
見合いで結婚した神さんに、「私のこと愛してる?」って聞かれて、即答できず、ずいぶん責められました。
愛というのは、未だにわかりません。
ユーリを好きなトーマが、トーマの愛を受け入れてくれないために、鉄道自殺をしてしまいます。
表面上は、冷静にふるまっているユーリですが、ユーリには、以前上級生に煙草に火を押し付けられる等のリンチを受けて、心に傷をもっている、という事情があったのです。
寄宿舎で、ユーリの同室になっている、オスカーは、ユーリが変な気を起こしたりしないように見張る役目だったのです。
(ユーリは、先輩のサイフリートたちの招待に応じ、リンチされ、神を裏切る行為をしてしまったことで、天使の羽を失い、ひとを愛し信じることを止めた。
)
トーマの記憶が薄れてしまう前に、トーマにそっくりのエーリクという転校生が現れます。
人間には、邪悪な心が潜んでいて、ときどき牙をむいたりします。
ユーリにも邪悪な心があり、エーリクにちらりと牙をむけたりします。
最終的には、人は人とかかわらずには生きていけないということを理解して、受け入れて、生きて行くということなのでしょう。
エーリクの母が、交通事故で亡くなり、学校に無断で出かけたエーリクをユーリが迎えに行きますが、漫画では、単独で行きます。
森さんの小説では、オスカーがユーリに同行します。
オスカーの視点から描いてあるので、そうせざるを得なかったのでしょう。
漫画では、母を失ったエーリクをトーマの両親が引き取るという話が出てきます。
エーリクとトーマは遠い親戚だった、というのです。
小説で出てくる、校長のセミナーの話は、漫画では出てきません。
ユーリのリンチの話や受けた火傷の傷、トーマがなぜ自殺をしたのか、ユーリがエーリクやトーマを受け入れて行く様子は、漫画の方がわかりやすいように思います。
よくわからないのがこの漫画の中で、「ルネッサンスとヒューマニズム」という本の持っている意味、です。
●天使の羽は(89頁)
(ユーリ)ぼくは賛美歌を歌い神を語るふりをする。
でもぼくはすでに天使の羽をもたない。
ぼくは毎週家へ愛をこめた手紙を書く。
ぼくは学校では信頼の厚い委員長だ。
でもぼくは誰も信じてはいない。
愛してもいない。
だから誰もぼくを愛してくれなくともいいのだ。
信じてくれなくともいいのだ。
ふりをし、つくろい、えりを正し、なにくわぬ顔をしてぼくは生きていけるのだから・・・
●ベートーベンはなぜ遺書を(104頁)
(先生)「なぜベートーベンはハイリゲン・シュタットの遺書を書いたんだ」
(エーリク)「好きな女にはふられるし、ヒスを起こすので友人はよりつかないし、酒を飲みすぎて胃は痛むし、へつらうには自尊心が高すぎ、近視で難聴でもうめちゃくちゃだったので」
●ゲーテがベートーベンの友人?(105頁)
(エーリク)「ゲーテはベートーベンをごうまんないなかっぺと言って彼のことではかんしゃくばかり起こしているし―」
●どこが面白い(155頁)
(エーリク)「女の子と知り合いになってどうするの?」
(仲間)「その!
楽しいじゃない。
話をしたり、キスしたり」
(エーリク)「それのどこが面白いの?」
●トーマはアムール(恋神)(161頁)
(オスカー)トーマの中にはアムールが住んでいたんだ。
それも極めつけの上等の。
それはもうそれだけで、触れた人間を幸せな気持ちにせずにはおかないような何かが。
●好かれるのなんかまっぴら(180頁)
(ユーリ)「ぼくはね人から好かれるのなんかまっぴらだね!
友情や行為や同情や・・・。
そんなものは迷惑だよ!
」
●ヘッセについて(194頁)
(エーリク)詩人になりたい、さもなくば生きていたくないとヘッセ入ったが小説家として名を成してしつこく85歳まで生きた。
若いころは学校は退学、本屋に勤めりゃ三日で逃げ出すホートー息子
☆萩尾望都の本(既読)
「ストローベリーフィールズ」萩尾望都著、新書館、1976.11.05
「少年よ」萩尾望都著、白泉社、1976.12.25
「月夜のバイオリン」萩尾望都著、新書館、1981.12.25
「戯曲・半神」萩尾望都・野田秀樹著、小学館、1987.10.20
「斎王夢語」萩尾望都著、新潮社、1994.09.20
「左手のパズル」萩尾望都著・東逸子絵、新書館、1995.08.05
「思い出を切りぬくとき」萩尾望都著、あんず堂、1998.04.23
「トリッポンのこねこ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トリッポンと王様」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トリッポンとおばけ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トーマの心臓」萩尾望都原作・森博嗣著、メディアファクトリー、2009.07.31
(2010年11月7日・記)
男の子同士が普通にちゅーしてたりもするけれど、当たり前のように受け入れられます。
「性」を感じないと言うか。
宗教絡みもあるからか、きれいなものを読んでる感じ。
ユーリの過去とか、謎?は後半に後半にひっぱってあったから急いで読んでしまったけれど、
漫画と言うより小説を読んでいるかのようでした。
落ち着いたらもう1回読み返したいな。
だからといって、暗い話ではなく、むしろ透き通った光のような話。
人を愛することがどんなことなのか、教えてくれる本。
読み終わった後には、なんだか優しい気分になる。
そして、何かわからないけど、愛おしくて、祈りたくなる気分になるのでした。
私のバイブル的な本(^_^)
高校生くらいから、ずっと好きだった漫画。
ふと、また読みたくなって、本棚から出してきた。
何度読んでも、心に染み入る何かを感じさせてくれる本。
また、いつか読みたくなった時のために、そっと本棚に戻したのでした。
男の子たちのあれこれだけど、なんていうか、登場人物の性別が曖昧な感じで、その間に巡る人間の思想とか感情とか、そういうのが、なんか、すごかった。
最初のトーマの手紙がもう、すごい。
愛情友情お祈りお別れ。
少年のリボンタイとか、全寮制とか、つまりギムナジウム好きには元祖と呼べる作品なのでしょうか。
年代を感じさせる独特な画風ですが、繊細で美しく世界観に惹きこまれました。
物語も続きが次々知りたくなる展開で飽きさせません。
少年たちの日常に垣間見る心の移り変わりや愛に、特に最後に感動しました。