
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
萩尾望都
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
コメント
何度も読み返したくなる。
美しすぎる男子の園、美しくもなく男子でもない私には一切無縁の愛の物語。
無縁すぎて、純粋に楽しめました。
最近、森博嗣さんの小説を読んで、頭にきた。
オスカーは、そんなじゃない!
親友、なんて言葉を、あんなにたやすく、使ったりしないだろう。
怒!
萩尾望都先生の世界を壊さないで!
もう、こっちを読み返して、気分をなおす。
…やはり、名作だ。
私は、オスカーが、大好きなのです。
15歳にして、あの大人感。
…素敵です。
漫画「トーマの心臓」を読んだのは、1981年です。
あんまり印象には残りませんでした。
「ポーの一族」「スターレッド」「百億の昼と千億の夜」等の方がずっと好きでした。
最近、森博嗣著「トーマの心臓」を読んだので、もう一度漫画の方を読んでみました。
森さんの本よりは分かりやすいように思いますが、テーマは、無償の愛ということのようなので、苦手のテーマです。
見合いで結婚した神さんに、「私のこと愛してる?」って聞かれて、即答できず、ずいぶん責められました。
愛というのは、未だにわかりません。
ユーリを好きなトーマが、トーマの愛を受け入れてくれないために、鉄道自殺をしてしまいます。
表面上は、冷静にふるまっているユーリですが、ユーリには、以前上級生に煙草に火を押し付けられる等のリンチを受けて、心に傷をもっている、という事情があったのです。
寄宿舎で、ユーリの同室になっている、オスカーは、ユーリが変な気を起こしたりしないように見張る役目だったのです。
(ユーリは、先輩のサイフリートたちの招待に応じ、リンチされ、神を裏切る行為をしてしまったことで、天使の羽を失い、ひとを愛し信じることを止めた。
)
トーマの記憶が薄れてしまう前に、トーマにそっくりのエーリクという転校生が現れます。
人間には、邪悪な心が潜んでいて、ときどき牙をむいたりします。
ユーリにも邪悪な心があり、エーリクにちらりと牙をむけたりします。
最終的には、人は人とかかわらずには生きていけないということを理解して、受け入れて、生きて行くということなのでしょう。
エーリクの母が、交通事故で亡くなり、学校に無断で出かけたエーリクをユーリが迎えに行きますが、漫画では、単独で行きます。
森さんの小説では、オスカーがユーリに同行します。
オスカーの視点から描いてあるので、そうせざるを得なかったのでしょう。
漫画では、母を失ったエーリクをトーマの両親が引き取るという話が出てきます。
エーリクとトーマは遠い親戚だった、というのです。
小説で出てくる、校長のセミナーの話は、漫画では出てきません。
ユーリのリンチの話や受けた火傷の傷、トーマがなぜ自殺をしたのか、ユーリがエーリクやトーマを受け入れて行く様子は、漫画の方がわかりやすいように思います。
よくわからないのがこの漫画の中で、「ルネッサンスとヒューマニズム」という本の持っている意味、です。
●天使の羽は(89頁)
(ユーリ)ぼくは賛美歌を歌い神を語るふりをする。
でもぼくはすでに天使の羽をもたない。
ぼくは毎週家へ愛をこめた手紙を書く。
ぼくは学校では信頼の厚い委員長だ。
でもぼくは誰も信じてはいない。
愛してもいない。
だから誰もぼくを愛してくれなくともいいのだ。
信じてくれなくともいいのだ。
ふりをし、つくろい、えりを正し、なにくわぬ顔をしてぼくは生きていけるのだから・・・
●ベートーベンはなぜ遺書を(104頁)
(先生)「なぜベートーベンはハイリゲン・シュタットの遺書を書いたんだ」
(エーリク)「好きな女にはふられるし、ヒスを起こすので友人はよりつかないし、酒を飲みすぎて胃は痛むし、へつらうには自尊心が高すぎ、近視で難聴でもうめちゃくちゃだったので」
●ゲーテがベートーベンの友人?(105頁)
(エーリク)「ゲーテはベートーベンをごうまんないなかっぺと言って彼のことではかんしゃくばかり起こしているし―」
●どこが面白い(155頁)
(エーリク)「女の子と知り合いになってどうするの?」
(仲間)「その!
楽しいじゃない。
話をしたり、キスしたり」
(エーリク)「それのどこが面白いの?」
●トーマはアムール(恋神)(161頁)
(オスカー)トーマの中にはアムールが住んでいたんだ。
それも極めつけの上等の。
それはもうそれだけで、触れた人間を幸せな気持ちにせずにはおかないような何かが。
●好かれるのなんかまっぴら(180頁)
(ユーリ)「ぼくはね人から好かれるのなんかまっぴらだね!
友情や行為や同情や・・・。
そんなものは迷惑だよ!
」
●ヘッセについて(194頁)
(エーリク)詩人になりたい、さもなくば生きていたくないとヘッセ入ったが小説家として名を成してしつこく85歳まで生きた。
若いころは学校は退学、本屋に勤めりゃ三日で逃げ出すホートー息子
☆萩尾望都の本(既読)
「ストローベリーフィールズ」萩尾望都著、新書館、1976.11.05
「少年よ」萩尾望都著、白泉社、1976.12.25
「月夜のバイオリン」萩尾望都著、新書館、1981.12.25
「戯曲・半神」萩尾望都・野田秀樹著、小学館、1987.10.20
「斎王夢語」萩尾望都著、新潮社、1994.09.20
「左手のパズル」萩尾望都著・東逸子絵、新書館、1995.08.05
「思い出を切りぬくとき」萩尾望都著、あんず堂、1998.04.23
「トリッポンのこねこ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トリッポンと王様」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トリッポンとおばけ」萩尾望都著・こみねゆら絵、教育画劇、2007.02.
「トーマの心臓」萩尾望都原作・森博嗣著、メディアファクトリー、2009.07.31
(2010年11月7日・記)
ユーリが背信的な過ちに苦悩し、彼を取り巻く恋がさらに心境を複雑にする。
ここで特に惹かれたのが作中の「愛情」はあまりいいものだと思えないことだ。
だれかを縛ったり苦しめたりする「愛の様相」が見応えあった。
日本との文化的差異が大きいから前提を間違えるとBL的な要素しか見えてこない気がした。
ぼくの生と死と それからひとりの友人について・・・
・・・ぼくが彼を愛したことが問題なのじゃない
彼がぼくを愛さねばならないのだ
どうしても』
非常に繊細。
文学の質を備えている漫画。
舞台はドイツのギムナジウム、主人公は自責の念から「自分には人を愛する資格がない」と心を閉ざす少年ユーリ。
冒頭いきなり少年(トーマ)が自殺し、彼と生き写しの転校生の目を通じて、トーマがどんな人間だったかが明かされていく。
次第に物語の焦点はユーリの苦悩へと移り、彼の再生までを丁寧に追う。
一瞬同性愛ものかと思ったが(男子校で生徒同士がキスしたりしちゃうもんだから)、そういう体裁をとったのは、性愛を排し、不信と孤独、愛と許しという主題に集中するためとみた。
彼らが口にする「好き」は、「きみの信頼を得たい」に近い。
『ぼくは成熟しただけの子どもだ ということはじゅうぶんわかっているし
だから この少年の時としての愛が
性もなく正体もわからないなにか透明なものへ向かって
投げ出されるのだということも知っている』
トーマの手紙はどこまでも名文。
ユーリはもらった翼でボンに飛び、神学校へ。
なんだかもったいない気もするが、彼の苦悩が信仰と不可分だったことを思えば自然か。
トーマの献身、エーリクの純粋さ、オスカーの優しさを、その人の愛ととるか、神の愛の現れととるのか。
ユーリはそこに「神の愛」を見た。
信仰のない私は前者かな。
でも、多分どちらでも同じなのだ。
それが彼を生かした、という意味において。