
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
萩尾望都
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。
トーマ・ヴェルナー。
そして、ユーリに残された1通の手紙。
「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。
信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。
透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。
今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
コメント
萩尾望都作品を読むのは、二作目です。
トーマの死の意味にようやく気がついたとき、雲間から光がさすような、暗く長いトンネルから抜けたような、柔らかでいて強烈な衝撃でした。
そして私は冒頭のページを開き直しました。
これもまた、リアルタイムで読んでいるはずなのに全く記憶にないのが不思議であった…が、謎が解けた。
こちらは小学生には難解すぎる。
死んだ同級生の魂をとらえられたままの主人公、ドイツの寄宿学校、マドンナ扱いされる美少年、他者の暴力による肉体と心の傷痕。
ところどころに後年の作品とも重なる断片がいくつもいくつも見つかる。
こんなに深く、美しい言葉の作品を、小学生も読む漫画雑誌に掲載していたのか。
よい時代によい作品に出会ってきたことにいまさら感謝する。
愛というものを知っている人間はどれくらいいるのだろう?
愛には距離感が大切だと思う。
遠すぎては愛がわからないし、近づきすぎると愛は別なものに形を変える…気がする。
でも、この本で描かれている愛はちょっと違うと思う。
きっと読むたびに答えが違うのだろうな…
愛について考えたい時、何度でも読み返そう。
この内容がこの表現で70年代に出てきたんだよな…行間がものすごく多い。
ストーリーもだけど情景や心理描写なんかももう文芸、純文。
久々に読んで、大昔に読んだときはたいして読み取れてなかったなと思った
著者の初期の代表作のひとつとされています。
13歳のトーマ・ヴェルナーは、ユーリことユリスモール・バイハンという少年に一通の遺書を残して自殺します。
かねてからトーマは、ユーリに好意を伝えていたのですが、ユーリはトーマの好意を拒みつづけていました。
そこへ、トーマにうり二つのエーリク・フリューリンクという少年がやってきます。
破天荒なエーリクの登場によってギムナジウムは騒々しくなりますが、そんな彼に対してユーリはいつまでも冷たい態度をとりつづけます。
最初は、ユーリのことを疎んじていたエーリクですが、ユーリと同室のオスカー・ライザーという大人びた少年やクラスメイトたちとの交流を通じて、しだいにユーリの心の奥にひそむものに魅かれるようになっていきます。
物語が進展するにつれて、エーリクの母が死に、オスカーの親にまつわる秘密が明かされるなどのエピソードを通して、登場人物たちの心の襞がしだいに細やかにえがき出されていきます。
そしてクライマックスでは、ユーリがトーマに引かれていながら、悪魔主義者であるサイフリート・ガストという上級生に誘惑され、トーマの愛を受ける資格をうしなったと感じ、みずから心を閉ざしていったことが明らかになります。
少女マンガ史において隠れもせぬ名作と評価される本書ですが、たしかに登場人物たちの心情の細やかさには目を瞠らされました。